川崎市立井田病院・雑感

一言で言えば、いろいろ興味深い体験が出来て面白かった。しかし疑問点や問題点が無いわけでもなかった。もともとこの年になるまで病気らしい病気などしたこともなく、病院と名の付くものには殆ど縁のなかった人間として、素直に感じたままを書かせてもらう。


(+)インフォームドコンセントは立派。時流かもしれないが、あそこまで丁寧にしっかりと説明されれば患者としても安心できる。臓器としての胆嚢の説明から始まり、手術方法の変遷と今回行う手術方法の説明、この2−3ヶ月間に撮った20−30枚にも及ぶレントゲン写真や超音波診断写真を示しての現状説明、執刀してみて可能性として考えられる最悪の結果、合併症や感染症などの考え得る悪い結果、術後の対応や対策までを列挙したことは立派だった。これは担当の外科・山本医師の人間性かも知れないが、質疑応答まで加えると1時間に及ぶインフォームドコンセントは納得できる非常に素晴らしいものだった。

(−)それに引き換え事務手続きはお粗末だった。クラークと呼ばれる職制があって、彼女らが入院に関する諸々のことを説明してくれるのだが、短い時間に一気にしゃべりまくり、我々夫婦(それも理解度は平均以上と思われる)という大の大人2人でも戸惑うぐらい一方的に早口に説明する。やれ婦長は・・、このエレベーターは・・、こっちのエレベーターは・・、面会室は・・、電話は・・、テレビは・・、電気は・・、洗面は・・、風呂は・・、食事は・・、月水金は・・、火曜日は・・、体を拭くタオルは・・、次から次へ一気にしゃべり続ける。しかも説明資料は一切無し。おいおい、これって変じゃないかい?これから入院・手術をしようとしている者に対してこれって余りにも不親切じゃないかい?本来、説明資料があって、その補足説明を口頭でするのが普通じゃないの?ダーーッと1回しゃべっただけで説明終了なんて、我々にも覚えられなかったんだよ。普通の人なら絶対、100%覚えられないぜ、きっと。

(?)入院手続きに関する疑問その1。入院時に「概ねかかるであろう金額」の説明がなかった。これって、病院ではどこでも普通なの?今回入院するときには既に「胆嚢摘出」という大まかな事は判っていたわけだし、その手術にだいたい幾らぐらい、一日入院するとだいたい幾らぐらいという説明が一切なかった。1週間入院して掛かる費用が10万円なのか、50万円なのか、100万円なのか、はたまた200万円なのか、ガイドラインの提示すら全くなかった。我々のようなDINKSにとっては問題ないが、家族4人で働き口は亭主のみという家庭だと不安だろうなぁ。

(?)入院手続きに関する疑問その2。入院に際し「個室」や「差額ベッド」の説明が無く、無条件で大部屋だった。これはどういうことだったのだろうか?単なる説明忘れか、或いは公立病院として、市民に安い医療を提供するという立場から、『説明要求がなければ病院側からは説明しない』というスタンスなのか?仮に差額が1日2万円〜3万円だったら個室に入りたかったなぁ。

(?)日々の暮らしでの疑問その1。起床は何時、朝の回診は何時、看護婦からのヒアリングは何時、という一日のタイムテーブルのようなものの説明資料が何もなかった。「クラークの説明」も然りだが、井田病院には病院のパンフレットを除くと説明資料というものが一切無かった。ベッドサイドのテーブルにでも説明資料をクリアケースにでも入れて置いておけば、入院患者やその家族は落ち着いてから読むことが出来て助かると思うんだけどなぁ。

(?)日々の暮らしでの疑問その2。手術に際し、事前に患者側で用意するものが多すぎる。バスタオル3−4枚、紙おむつ1−2枚、T字帯1−2枚、等々、病院側が有料で用意すればいいんじゃない? 『公立病院として少しでも安い医療を心がける』という大義名分があるのかも知れないが、患者側の自助能力に任せきり、いちいち患者側に用意させるというのも何だか前時代的な感じがした。

(?)日々の暮らしでの疑問その3。浴室に石鹸やシャンプーがなかった。しかも「無い」という明示もなかった。これも上の理由と同じかも知れないけど、もう少しサービスがあってもいいと思う。せめて「無い」という説明資料を用意すべきだ。

(+−)看護婦について、その1。常時3つのグループがいて、それぞれが受け持ちの患者を持ち、いわゆるゾーンディフェンスのような体制をとっていた。看護婦全員で全入院患者を診ると言うわけではないので、きめ細かな対応が出来ているようだった。しかし、私が入っていた大部屋(6人部屋)へ患者へのヒアリングのため入れ替わり立ち替わり複数の看護婦が来るなど、非効率的な面も感じられた。また、最低限自分の受け持ちの患者を診る事への責任感はあるだろうが、他のグループが受け持つ患者への目が行き届かないということも考えられるだろうなぁ、と多少不安にもなった。(この体制ってどこの病院でも普通なの?)

(+−)看護婦について、その2。担当医だけでなく担当看護婦というのが決まっていた。いわゆるマンツーマンディフェンスだ。私の場合、入院してから3日目に手術があったが、担当看護婦は初日は日勤、2日目も日勤、3日目は日勤+夜勤もしていた。自分が受け持った患者に対して責任を持つという体制は素晴らしいものだったが、業務引継がうまく行かないと誰もカバーできないだろうし、多少不安だった。当然の如く担当看護婦は4日目、5日目と休みだったが、案の定、本来ならば4日目から投薬されるべき薬と5日目から投薬されるべき薬が私の元に届かなかった。投薬についての説明があったのは退院日である6日目だった。


『総論』

良くも悪くも「質実剛健、昔の川崎革新市政の産物」という印象だった。決して悪く言っているのではない。あれはあれで立派な姿勢だと思う。ただそうであるならば『川崎市立井田病院はこうです!』という説明や告知(広報的なもの)が欲しかった。パンフレットだけでは意志が全く伝わらず不十分だ。今回私を診てくれた担当医や担当看護婦がステキで立派であっただけにチョット残念な感じだ。

このまえ井田病院に行ったのは20年前。当時、関東労災病院は老朽化していたが井田病院はキレイだった。そして20年前も当時の整形外科外来の担当医は若くテキパキしていて好感が持てた。(昔のカルテを引っぱり出せば何という担当医だったのかも判るだろうね)そう言う意味では私は川崎市立井田病院のファンでもある。今回行ってみてやはり時の経過はそこここに感じられた。そろそろ井田病院もリニューアルしなくちゃね。川崎縦貫地下鉄もいいけど、病院の方が先じゃないのかな。

『要望』

入院に際して、病棟での諸処事項に対する説明は口頭でなく、詳細を記したメモを用意するよう改善して下さい。入院患者やその家族が、あとになってゆっくり読めるようなものを用意しておくべきです。口頭による説明はあくまでも補助であるべきだと思います。

尚、私のこの意見は川崎市立井田病院の公式サイトへ投稿します。